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<TITLE>残像10</TITLE>
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    <TR>
      <TD width="600" bgcolor="#FFFFFF" align="left">我は狂人のごとく。<BR>
      <BR>
      <B><BR>
      　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　残像（10）</B><BR>
      <BR><BR><BR><BR><BR><BR>
      <BR>
      <BR>
      完全に陽の落ちた室内は薄暗く、そろそろランプが必要かと思われたが、<BR>
      それを付けるためにエドワードが動くことは無い。<BR>
      同じく、ロイも金縛りにあったように動けないでいた。<BR>
      <BR>
      しかし、明かりが欲しい。<BR>
      その心の内まで、見通す明かりが。<BR>
      <BR>
      <BR>
      「今、なんて？」<BR>
      「だから、アンタは俺の事が好きだったの」<BR>
      抑揚も無く繰り返すエドワードに、ロイが怪訝な目を向けた。<BR>
      「それは、どういう…」<BR>
      「好きにどうもこうもないだろ。ああ、言っとくけどセックス有りの意味だからな」<BR>
      目の前の少年に全くそぐわない物言いと、卑俗な内容にロイは愕然とする。<BR>
      「何をばかな…！」<BR>
      「どうして。アンタ最初からそういう事を聞きたかったんだろう」<BR>
      やや不自然に思えるほどに、はすっぱな口調で話す少年をロイは呆然と眺めた。<BR>
      そして自分の中に怯懦にも似た感情が湧くのを感じる。<BR>
      口では否定しつつも、それはすでに心のどこかでは疑ってきた事だったからだ。<BR>
      敢えて考えないように、追いやっていた答えを当のエドワードによって暴き出されてしまった。<BR>
      考えてみれば、酷く単純で簡単な答えだ。<BR>
      <BR>
      しかし、単純すぎる。<BR>
      <BR>
      「大人を、からかうものじゃない」<BR>
      ロイは、ゆっくりと呼吸した。そう、馬鹿げていると思う。<BR>
      確かにこの子供の事が、不思議なほど気にかかるのは事実だ。<BR>
      今も自分を睨みつけるようにしている、その零れんばかりの金色の瞳を<BR>
      見ていると、言葉にしがたい感覚が自分に生まれるのを感じる。<BR>
      （―最初からそういうことを聞きたかったんだろう）<BR>
      ロイは、胸の内でエドワードの言葉を反芻した。<BR>
      不安とも焦燥ともつかない漠然とした何かに押されるようにしてここまで来た。<BR>
      確かに職務を抜け出してまでエドワードに会いに来たのは、<BR>
      彼にそう聞きただしたかったからなのかも知れない。<BR>
      そして彼は、心の奥へ追いやっていた予想の範疇内の答えをロイに言い渡した。<BR>
      しかし、改めて目の前にエドワードを据えて見るに<BR>
      彼に感じる想いは、部下に寄せる信頼でもなく、保護すべき対象への親愛でもない。<BR>
      しかし、かといってそれが恋情かと問えば、否定するものも無いかわりに<BR>
      それを肯定するものも又、無いのだった。<BR>
      それが理性の成す事なのか、それとも失われた記憶が反発するのかはわからないが<BR>
      自らの感覚を信じるとすれば、エドワードの言い分を素直に受け入れる事はできなかった。<BR>
      <BR>
      ロイは、少なくとも今の自分に考えられる言葉を口にする。<BR>
      「…私は男の、しかも子供なんて趣味じゃないはずだ」<BR>
      「だから忘れてるんだろ？」<BR>
      「記憶が無くたって自分の性癖くらいはわかる」<BR>
      それは犯罪で、自分がすすんでそのような道に足を踏み入れるとは到底、考えられない。<BR>
      断言するロイに、エドワードが苦いものを飲み下すような顔を浮かべた。<BR>
      「知らないよそんなの。後腐れないから良かったんじゃないの」<BR>
      ロイは眉根を寄せる。<BR>
      「それはただの捌け口扱いで。君もそれを甘んじて受けていたと、そういう事を言いたいわけかい？」<BR>
      「そうだよ。その方が俺も都合が良いし、色々便宜を図ってもらえるだろ？」<BR>
      「それはつまり、打算的な関係だと」<BR>
      「そう、男同士で、大人と子供で。そこに何が芽生えるっていうの」<BR>
      「君は、私が君を好きだといった。では君は？」<BR>
      「野良猫だって構ってれば多少の情が移る。構われてる猫も同じだ」<BR>
      エドワードはまさに逆毛を立てた野良猫の如く、ロイの言葉をはじき返してくる。<BR>
      目の前の少年にはまるで似つかわしくないことばかりを紡ぎ出す唇、そして<BR>
      痛みを堪えるようなその表情に、ロイの目つきが険しくなった。<BR>
      「…エドワード=エルリック。本当の事を言いなさい。そしてそういう物言いを止すんだ」<BR>
      「信じないの？俺が嘘をついてるって。じゃあ、大佐の俺に対する感情って何。<BR>
      子飼いの狗に対する欲以外に何があるって？」<BR>
      「………」<BR>
      嘲りを隠そうともせず、挑発に変わりない言葉を吐き出すエドワードの様子に<BR>
      ロイが剣呑な瞳を浮かべる。<BR>
      「ほら、答えられないくせに」<BR>
      <BR>
      目の前の男を怒らせている自覚はあったが、エドワードはそれを止める術を持たなかった。<BR>
      自分がいかに無茶な言い分をつき通そうとしているのかは解かっていた。<BR>
      ロイがまるで信じていない事も。<BR>
      それでも止められない。<BR>
      苛々とした感情が渦巻き、何かにぶつけないと自分が壊れてしまいそうだった。<BR>
      そして、自分のつき通している嘘が本当だったなら良いと思う。<BR>
      それがどんなに醜くとも、ロイと対等でいたかった。<BR>
      そこに無いものとして、何の気も止められない存在にされるよりは。<BR>
      <BR>
      <BR>
      <BR>
      「…違う、君は嘘を言っている」<BR>
      ひたりとロイの冷たい視線が当てられる。<BR>
      「嘘なんかじゃないったら！」<BR>
      決してあからさまに怒りを表す事の無い、その静かな迫力に気圧されながらも<BR>
      エドワードは果敢に叫んだ。<BR>
      <BR>
      「―そうか、なら」<BR>
      <BR>
      言うなり、ロイはエドワードの二の腕を掴むと、自分の腰掛けていたベッドに引き倒した。<BR>
      捕まれた腕の痛みと、急速に反転する視界にエドワードの思考が一瞬、停止する。<BR>
      冷たいシーツの感触と、覆い被さるロイの体の重みに意識を覚醒させると<BR>
      エドワードは小さく叫び声を上げた。<BR>
      「痛っ！…っな、何する…っ」<BR>
      「何って？こういう事をしていたと君が言った」<BR>
      これ以上ない程の至近距離で飛び込んできた漆黒の双眸に、エドワードは息を呑んだ。<BR>
      そしてロイによって易々と組み敷かれてしまったことを実感する。<BR>
      無防備に顔の両サイドに固く押さえつけられた両腕はびくともしない。<BR>
      途端、ロイに対して感じた事のない種類の恐れが胸を突き上げてくるのを感じた。<BR>
      ただの拘束とはわけが違う。それがセクシャルな意味合いを持った時、<BR>
      これほどの恐怖になるとは、全く経験の無いエドワードには思いもよらぬことだった。<BR>
      いっそ何の感情も感じられないロイの静かな声が、エドワードをさらに煽る。<BR>
      そんな様子を見てか、ロイの口の端が嫌な風に上がった。<BR>
      「君がどうされるのが好きだったのかも覚えてない。教えてくれるかい」<BR>
      「ば…っ、よせよ！離せ…！」<BR>
      拘束が緩んだ隙を見て、容赦なく顔面に突き出したエドワードの拳を<BR>
      ロイは難なく避けると、再度その手首を掴んだ。<BR>
      掴むというよりは、捻り上げるという表現が自然なほどその力は強い。<BR>
      思わず、エドワードの口から小さな悲鳴が洩れる。<BR>
      掴み上げた左手を、ロイが冷たく一瞥した。<BR>
      「随分と乱暴だな。どうやら無理やりがお好みという事か」<BR>
      「ち、違っ…大佐！」<BR>
      ロイが低く笑い声を上げる。<BR>
      「なら、そのように。存分に楽しみたまえよ」<BR>
      「った、」<BR>
      ロイは、掴んだ左手の指先と、そしてエドワードの唇に触れるか触れないかの<BR>
      軽い口付けを落とすと、そのまま頤まで舌先を滑らせ喉頸に歯を立てた。<BR>
      長い指先を持つ手が、薄い衣服の上から縦横に這わされる。<BR>
      硬直する体。自分の意思などまるで関係なく圧倒的な力によって<BR>
      支配されていると感じた。<BR>
      いくら体術に覚えのあるエドワードでも<BR>
      ここまで完璧に押さえ込まれてしまえば普通の子供とそう大差はない。<BR>
      ましてや相手は軍人であり力の差は歴然だった。<BR>
      「や…」<BR>
      大人の男の匂いと、自分のものでは無い温い熱。間近に感じる息遣い。<BR>
      そして身動きの取れない身体。<BR>
      未曾有の恐怖にエドワードの体が仰け反る。<BR>
      「やめろっ、嫌だ！　いやあ！大佐！」<BR>
      「…………っ」<BR>
      恐慌をきたしたエドワードが叫ぶ。<BR>
      <BR>
      涙の滲んだその声に、螺子が切れたようにロイはピタリと動作を止めると、<BR>
      その顔を首筋に埋めたまま、身体を揺らしくつくつと笑い出した。<BR>
      それにつれて先ほどまでの張り詰められた緊迫感が徐々に緩まっていく。<BR>
      エドワードは、ただ呆然とするばかりだった。<BR>
      ややあって、ロイが、顔を上げる。<BR>
      その顔には先ほどまで滲ませていた性的な色は全くなく、<BR>
      いつも通りの彼らしい薄笑みが浮んでいた。<BR>
      「…ほら、やっぱり君は嘘をついた。どうみても慣れてないくせに粋がっても無駄だよ」<BR>
      「な…っ！」<BR>
      一連の動作がロイの演技だったのだと気付き、それでも震えの収まらないエドワードに<BR>
      ロイは冷ややかな視線を向けた。とたんエドワードは冷水を浴びせられたような気分になる。<BR>
      「悪さが過ぎる子供は、お仕置きを受けるんだよ。思い知りなさい」<BR>
      放り出すようにして、ロイはエドワードから身体を離した。<BR>
      「君のついた嘘からわかった事がふたつある」<BR>
      軽く服の皺を直し、乱れを調えるとベッドから降りる。<BR>
      「ひとつは、私と君がそういう関係では無かったという事」<BR>
      ロイは、痣の残るエドワードの生身の左手を眺めた。<BR>
      思いのほか、濃く跡が残っている。恐らく暫くは痛むことだろう。<BR>
      その気になれば右手を甲剣にするチャンスはいくらでもあったというのに、<BR>
      エドワードはそうしなかった。<BR>
      ロイは使われなかった機械鎧の右手と、怯えの隠せない表情を浮かべるエドワードを<BR>
      暫く相互に眺める。<BR>
      「そしてもうひとつ」<BR>
      <BR><BR>
      <BR>
      <BR>
      「君が私を好きだという事だ」<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>
      <BR>
      <A href="http://spc9.s96.xrea.com/spc9/u9/w-zan10e.htm" target="_self"><B>NEXT</B></A><BR>
      　</TD>
    </TR>
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<P><BR><BR>
<BR><BR><BR><BR><BR>
<BR>
<BR>
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<BR>
</FONT><BR>
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